日本の観光ブームは衰える気配がありません。2025年には、外国人旅行者が初めて4,000万人を超え、過去最高を記録しました。さらに2026年初頭も、前年を上回る成長が続いています。
東京・京都・大阪が依然として最もよく知られた観光地である一方で、他の都市もその存在感を高めようと取り組んでいます。その中には、私たちの都市・仙台市も含まれています。仙台市は、国際的な認知度を高めると同時に、観光が都市の強靱性を高め、地域住民に長期的な利益をもたらすことを目指しています。
観光を通じた東北の復興と持続的成長に向けて
仙台市にとって観光とは、単に観光客を呼び寄せることではありません。復興を支え、地域経済を活性化し、将来に備えるための、より広い取り組みの一部なのです。東北地方の中心都市である仙台市は、この取り組みをリードする立場にあります。一方で、人口減少、高齢化、若者の東京への流出、地域交通やサービスへの負荷といった多くの課題にも直面しています。
こうした課題は、2011年の東日本大震災によってさらに深刻化しました。日本で観測史上最大となるマグニチュード9.0の地震は、場所によっては高さ7メートルを超える津波を引き起こし、仙台市を含む広域に甚大な被害をもたらしたのです。
この東日本大震災以降、観光は仙台の復興戦略において重要な役割を担ってきました。観光の価値は、観光客を呼び込むことだけではありません。宿泊、飲食、小売、交通、文化、イベントなど幅広い分野の活動を支える点にもあるのです。仙台市にとっての課題は、市の持つポテンシャルを持続可能な成長へとつなげ、より強靱、包摂的で、世界とつながる都市を築いていくことにあります。
歴史を礎として
仙台市には、豊かな文化的・歴史的資源があります。約400年前、戦国武将の伊達政宗公が青葉山に城を築きました。現在、この地域では仙台の歴史と文化をより鮮やかに伝えるための新たな取り組みが進められています。
その重要な取り組みの一つが、仙台城の大手門の再建計画です。高さ約12.5メートルの大手門は、かつて日本でも最大級の城門の一つでした。1945年の空襲で破壊されましたが、伊達政宗公の没後400年にあたる2036年までに再建される予定です。伝統的な建築技法と意匠を用いた再建プロジェクトにより、仙台城の大手門が、国内外から訪れる人々にとって、新たなランドマークとなるでしょう。
文化資源の活用
仙台市は、文化都市としてのアイデンティティを生かした取り組みも進めています。仙台国際音楽コンクールによって、世界中の若い音楽家が集まる「楽都仙台」として、すでに広く知られています。この評価をさらに高めるため、仙台市は音楽ホールと東日本大震災のメモリアル拠点を融合した、新たな文化複合施設の整備を進めています。この施設は、2025年大阪・関西万博の会場デザインも手がけた建築家の藤本壮介氏による設計で、環境に優しく、かつ防災に強い都市としての仙台市の姿を象徴するものとなります。
また仙台市は、ポップカルチャーも観光資源にしています。仙台は、高校バレーボールを題材にした漫画『ハイキュー!!』の舞台の一つとして広く知られています。市は主要キャラクターを「仙台観光アンバサダー」に任命し、市内の体育館や博物館などに作者による描き下ろしイラストの記念モニュメントを設置。国内外のファンにとって人気の撮影スポットとなっています。

もう一つの例が「Pokémon GO Fest 2024:仙台」です。ニューヨーク、マドリードと並び、世界でわずか3都市のみで開催されたこのイベントに、約38万人が参加。地元商店街との連携により、飲食店、宿泊施設、その他の地域事業者に恩恵をもたらし、推計74億円の経済効果を生み出しました。このイベントの開催で得られた経験を踏まえ、仙台市は今後、位置情報型ゲームの継続的な拠点としての地位を確立し、バーチャルとリアルを融合させた新たな観光体験の創出を目指しています。

より強靱で包摂的な観光経済の構築
仙台市の「仙台観光戦略2027」は、2011年の東日本大震災の教訓によって形づくられています。復興とは、単に失われたものを再建するだけでなく、より安全で将来に備えた都市をつくることでもあります。震災後、仙台市は第3回国連防災世界会議を開催し、「仙台防災枠組2015–2030」が採択されました。この枠組みとして、仙台市は防災の理念を都市計画に取り入れ、安全な都市環境の構築に取り組んでいます。
観光戦略は、地域の商工会や宿泊業界の代表協議会など、地域の関係者からのご意見を反映して策定し、戦略内容の精査、事業効果の評価が行われています。観光が長期的に成功するためには、地域住民や地元企業にとっても有益であることが不可欠なのです。
誰もが楽しめる観光地へ
仙台市と東北地方には、迫力ある自然景観や豊富な鉱泉をもつ温泉、祭り、歴史、そして豊かな文化遺産など、多くの魅力があります。しかし、仙台にとって観光とは、単に観光名所を宣伝することにとどまりません。人口構造の変化や震災の深い影響を抱える地域において、観光がどのように復興、強靱性、そして再生を支えることができるのかということなのです。
私たちが、仙台・東北を、東京、京都、大阪とは異なる体験を提供する観光地として、世界に向けて「Another JAPAN – SENDAI, TOHOKU」として発信する取り組みの背景には、そういった思いがあるのです。仙台・東北以外の政策担当者にとっても、この教訓は重要です。観光は、単なる旅行者の消費を生み出す手段ではないのです。地域固有の資源に根ざし、地域のニーズに応え、より広い政策目標と結びつくことで、観光は都市をより強く、より包摂的にし、未来への備えをより充実させる力となり得るのです。
このトピックに関するOECDの成果については、『OECD Tourism Trends and Policies 2024』をご参照ください。
郡和子氏は2017年から仙台市長を務めています。衆議院議員時代から東日本大震災の復興に尽力してきた経験を踏まえ、「誰一人取り残さない強靱な都市」として仙台が世界のモデルとなることを目指しています。
衆議院議員を4期連続で務め、2005年から2017年までの12年間、内閣府大臣政務官や東日本大震災復興対策担当大臣政務官などの要職を歴任。
津波避難情報のための世界初の完全自律型ドローンの試験飛行や、国ではなく地方自治体として初めて実施された「仙台防災枠組2015–2030」の中間評価など、多くの実績を積み重ねています。

