近年、全世界的に少子化が進行している。子供は社会の宝であり、その笑顔は未来への希望である。だからこそ、今を生きる私たちが、確かな「戦略」と「意志」を持って、望む人が安心して子供を産み育て、子供が健やかに成長できる環境を整えることが重要だ。この考えは、OECDの取組の方向性とも軌を一にするものである。
東京都が2025年3月に策定した「2050東京戦略」では、戦略の第一に「チルドレンファースト」を掲げており、最優先で進めてきた。これらの取組が今、確実に実を結んできている。
残念ながら我が国全体で出生数減少に歯止めがかからない中、2025年上半期における東京の出生数は10年ぶりにプラスに転じた。2024年上半期と比較して0.3%増加し、下げ止まりの兆しが見えてきている。
望む人が安心して子供を産み育てられる社会
東京都は、一人ひとりの想いに寄り添いながら、出会い・結婚から妊娠・出産、子育てまで、切れ目のない支援を講じている。
「結婚したい」と望む方には、AIで相性の良いパートナーを紹介する「TOKYO縁結び」を展開。2024年9月の運用開始以降、申込者数は30,000人に上り、成婚組数は121組に達した。また、将来の妊娠に備える選択肢として、卵子凍結の費用助成を開始し、4,000人超から申請があった。
こうした「共感」を生む取組に加えて、人々のマインドセットを変容させる取組も重要である。
男性の育児休業取得率は女性に比べ低水準にとどまっているため、東京都では育児休業しやすい職場環境の整備に加え、「育業」という愛称を使い、育児は「休み」ではなく「未来を育む大切なしごと」と位置づけている。2015年度に4.5%だった東京都内の男性育児休業取得率は、2024年度に54.8%と10倍以上も増えた。
東京都産業労働局「令和6年度東京都男女雇用平等参画状況調査結果報告書」を基に作成
子供の声を聴き、政策に反映する
東京都では、当事者である子供の声や思いに耳を傾け、子供目線に立った政策を推進している。
デジタルツールの活用や、学校・地域拠点などへの訪問などにより、毎年18,000人の子供の声を聴き、公園でのボール遊び場の創出などに繋げている。また、中高生が知事に政策提案できる仕組みも運営している。
また、子供や保護者が悩みをSNSで気軽に相談できるサービス「ギュッとチャット」では、心理士や保健師、年齢が近い大学院生など、多様な相手の中から自分に合った人を選ぶことができる。2025年11月末時点での相談件数7,000件超の内、9割は18歳以下である。
東京から世界へ、子供政策の輪を広げる
世界の都市の英知を結集し、子供を「主体」として捉えた取組をさらに広げていくことが重要だ。
2025年8月、「こどもシンポジウム“TEENS SQUARE”」を開催し、東京と海外4都市から計36名の子供たちが東京に集い、3日間にわたり子供政策について活発な議論を行った。
子供たちを海外に派遣するプロジェクトにも力を入れており、これまで東京の中高生がアイルランドとベルギーを訪問し、各国の子供の声を聴く取組や子供の権利について理解を深めた。
これらの子供たちが主役となった様々な取組を通じて、子供の交流の輪を世界に広げていきたい。
子供政策を司る「大人の交流」も重要だ。
2025年2月、「東京こども政策国際会議」を初開催し、アジアと欧州から13都市等の実務責任者が集まり、子供の参画などに関する知見を共有した。次回は2026年2月に開催予定であり、10代(10~19歳)の7人に1人が精神疾患を経験しているという現状を踏まえ、「思春期のメンタルヘルス」をテーマとしている。
もっと「人」が輝く社会の実現に向けて
子供の笑顔が溢れ、望む人が安心して子供を産み育てられる東京を創るため、都民の共感を得られる施策を展開していくことが必要だ。
「チルドレンファースト」の政策を通じ、東京は子育てに理想的な環境となりつつあり、子育て層へのアンケートでは、約90%が「住んでいる地域が子育てに良い場所である」と答えている。
※2 そう思う+どちらかといえばそう思うの割合
(資料)東京都子供政策連携室「とうきょう こども アンケート」を基に作成
気候変動の深刻化、驚くべきスピードで進化するテクノロジーなど、極めて不安定・不確実な時代である。
こうした中でも、子供が未来の礎であり、かけがえのない存在であるという事実は変わらない。
これからも、子供や子育て家庭のリアルな声や思いに寄り添いながら、「チルドレンファースト」を合言葉に、斬新な発想の下、明るい未来をデザインしていく。
高齢者が住みやすい都市づくりに関するOECDの取り組みについて詳しくは、2025年版報告書「あらゆる年齢層のための都市」をご覧ください。都市開発と都市に関するOECDの取り組みについては、こちらをご覧ください。
